ギグレポ:The View (Liquidroom, Edinburgh, 01/09/2006)

It Came From Dryburgh ―“The View, The View, The View are on fire!”

その夜の人々の興奮ぶりは、まったく理解に難くない。何かが始まったのだ。何か、飛び切り嬉しくなるような素晴らしい何かが。しかもそれは、ロンドンではなくて、ここスコットランドから始まった。

それにしても、客層が広い。そんなに小さいわけでもない会場に、ひしめき溢れる観客を見渡して、軽く驚いた。若い子供たちはもちろん、四・五十代の男女も少なくない。国を挙げての注目度の高さが伺える。張り切って着飾ったお嬢さん方も数多く見受けるけれど、圧倒的に骨太な男性のほうが多い。女の子にチヤホヤ騒がれているだけのベビーフェイスではないということか。

バンドを待ちながら、緊迫すらはらんで来た客席の中から、自然とバンドを呼ぶ合唱が生まれてきた。”The View, The View, The View are on fire! ”―単に名を呼ぶだけではない。まるで歌うように、合言葉を、声を合わせて叫ぶのだ。観客が、興奮して待ちきれず、サウンドチェック中のステージに飲み物を投げ込む。「もしこれ以上飲み物をステージに向かって投げたら、今日のショーは中止だ」―警告が発される。それに反発して暴れようとしたり、また酒を投げ込もうとした観客が、セキュリティによって力ずくで退場させられる。The View are on fire! の大合唱が、何度となく起こる。客席はもう、一触即発だ。

登場したThe Viewは、ひょろひょろの少年たちだった。それもそうだ、まだ18やそこらという若さなのだもの。けれどこれから膨大な数のギグ日程が控えている売れっ子は、どこか自信を漂わせながら、観客を楽しませ、また自分たちも楽しむ術を身につけていた。もちろん勝手知ったるスコットランドでのホームゲームということもあるだろう。イギリス全体にヒットを巻き起こしている「Wasted Little DJ’s」はもちろん、MySpaceやこれまでのギグを通してお馴染みになっているナンバーも数多く、観客はアルバムはおろかシングルだって一枚しかリリースしていないこのバンドの、大多数の曲を既に「知って」いる。

そうかといって、ショーの内容は予定調和的な盛り上がりとはかけ離れている。クレイジーなポップ・チューンからややメローなメロディ、そして皆で歌えるアンセムまで、歳からは考えられないほど安定した演奏ぶりを見せる少年たちは、バラエティーに富んだクオリティの高い曲の数々を観客に提供する。それはやはり、思わずにはいられない。Pete Dohertyの天才が、こんなところに飛び火したのだと。彼らの音楽は飛びぬけて楽しいのが身上で、パンク・ロックテイストが濃いにも関わらず、ステージ前はモッシュ・ピットではなく、なんとダンス・フロアになっている。皆がニコニコ躍っているのだ。あの大合唱といい、その盛り上がり方は、もしかしたらスコッツ特有のスタイルかもしれない。でも問題ない。The Viewはスコットランドのバンドなのだから。

思い出してみよう。この前定員300程度の会場で、ソールドアウト・ショーを見たのはいつだったか? 汗だくのオーディエンスの中でもみくちゃになって飛び跳ねたのはいつだろう? ぶつかってどつかれてふっとばされて、それでもステージを見ながら、ただ幸福感にだけ浸っていられたのはいつだ? 踊れないのに楽しそうな皆につられてつい手足を動かしてしまったのは? ビールを頭から3回以上浴びたのは? ステージ・インヴェージョンを見たのは? そのステージに乱入した客がかなりぽっちゃりした田舎娘たちで、ステージの上でただご機嫌に踊っていたのを見たのは? 観客がバンドと一緒に完璧に歌い上げるのを5曲以上聴いたのは? バンドがショーの最後に、みんなのお気に入りナンバーをじらしたのは? 会場から出るまでのスシ詰め状態のなかで、ライブで自分がかいた何倍もの汗を、むさ苦しい野郎どもから吸い取らなくちゃいけなかったのは? 道路に出た観客が、バンドの名を大合唱し続けていたのは? そして道をふさいだり歩道に寝転んだりして、閑静な歴史の街に、喧騒と交通渋滞を巻き起こしたのは?

幾つかの問いには、自分なりに答えがある。幾つかの問いは、答えを持たない、つまり全く初めての経験だ。そしてその全てがその夜、エジンバラのオールド・タウンで起こった。これは事件ではなかろうか? ライブは始まりから終わりまで、あるいは終わった後まで、徹頭徹尾混乱だった。しかし、実際のところは何が起こったのか? ―皆が熱烈な喝采をもって四人の少年たちを歓迎し、そして彼らはその歓迎に、見事なまでに答えてみせたのだ。

かつてThe Von Bondiesは、ギターウルフを見た衝撃を、「It Came From Japan」という曲にした。The Viewは確かに、人々に衝撃をもたらした。そして、それはスコットランドからやって来た。もっと言うならダンディーから、いや、ダンディーのドライバラから。人々の歓喜は、まったく理解に難くない。

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